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2014年4月10日

化粧品のパッチテスト

 

関東 裕美(東邦大学 大森病院 皮膚科教授)

1.化粧品皮膚炎

自分に適していない洗顔や化粧方法品を取り入れて皮膚がちりちりしたり、痒くなったり、赤くなったり火照ってしまったりという症状は急性刺激性接触皮膚炎、それが長期間続くと慢性刺激性接触皮膚炎になります。臨床の現場では圧倒的に刺激によるかぶれ、いわゆる刺激性接触皮膚炎が多いのですが、防腐剤、香料、色素などでアレルギー性接触皮膚炎を生じることがあります。アレルギー症状に気がつかずに漫然と外用治療で原因物質の接触が続くと、アレルギー感作はより強力になり、接触部位を越えて発疹が拡がってくる重症のかぶれは接触皮膚炎症候群と診断されます。
顔面に炎症が起こると紫外線の影響もあり、炎症後の色素沈着や白斑を生じてしまうこともあります。また化粧品の特性、機能を理解しないで使用量、使用方法を間違うと化粧品誘発の異常乾燥や痤瘡(ニキビ)の悪化をきたすこともあります。


2.どのような場合にパッチテストをする?

化粧品皮膚炎が生じる要因として以下のようなことがあげられます。

◆化粧品の刺激・アレルギー:
  1. ① 化粧品を変えたことによる刺激感
  2. ②口唇乾燥に対しリップクリームや口紅を継続使用しているうちに口唇の腫れと亀裂が悪化

積極的にパッチテストを実施すべきですが、②は口唇化粧品による接触皮膚炎の可能性と歯科金属アレルギーの可能性両者を考えてのパッチテストが必要です。

◆使用方法の誤り:

  1. ①クレンジングクリームをナイトクリームと間違えた
  2. ②痤瘡の顔面に油性クリームや油性ファンデーションを使用して痤瘡悪化
  3. ③美顔術と称して擦りすぎ、シミをとる目的で擦ってかえって色素沈着が悪化

①,②の場合は化粧品パッチテストをする意味はあまり感じません。日常の洗顔・化粧方法の指導をすることで多くの場合解決しますが③の色素沈着悪化症例については色素沈着型接触皮膚炎の可能性もありますからパッチテストは実施すべきです。


3.どのような手順で行うのか?

眼周囲や口周囲の乾燥が顕著な症例では洗浄剤による皮膚刺激症状であることが多く、化粧品による皮膚炎を疑ったらまず洗浄剤を含む化粧品全てを中止させます。化粧行動が必要な方には代替品となるようなクレンジングオイル、保湿剤やサンスクリーン使用指導をして皮膚症状の回復を促し、原因製品確認のためにパッチテストを実施します。

パッチテスト:

①貼付方法・・・手技と貼付時間

 パッチテストユニット(フィンチャンバー®)を使用してアルミ板上に油溶性の製品は20mgのせて貼付、化粧水などのアレルゲン(個々の成分)が水溶性の場合には、ワセリンをのり代わりにして付属の丸いろ紙をアルミ板に固定した後、アレルゲンを15μl滴下して、通常上背部に48時間閉鎖貼付します。洗い流す化粧品については通常1%濃度で貼付してアレルギー反応かどうかを検討します。
重症のかぶれを起こすことが多い揮発性の製品などはオープンテストを行います(図1)。適切なアレルゲンを選択してチャンバーにアレルゲンをつけたあとは背部或いは上腕外則に貼付してパッチテストチャンバーが剥がれないようにその上から絆創膏で固定します。

fig1

図1

紫外線の関与がある接触皮膚炎では通常パッチテスト前に光線過敏の有無を確認するために最小紅斑量(MED)を測定します。原因アレルゲンの系列を48時間閉鎖する通常パッチテスト用と光照射用を準備しておきます。光照射をする系列は貼付24時間後に剥がして2/3MEDの紫外線を照射し、翌日、48時間閉鎖系列と比較して判定をします。

②判定

48時間閉鎖貼付した後にパッチテストユニットをはずし、アレルゲンがついていた部分のマーキングをして(図2)、絆創膏の影響による赤みなどが取れる1時間半~2時間後に初回判定(48hr判定)、2回目は翌日(72hr判定)か2日後(96hr判定)或いは翌週判定することもあります。判定基準は本邦基準 とICDRG基準 が知られていますが通常ICDRG基準で判定されるのが適切とされています。

fig2

図2


4.得られる結果は?

原因製品が陽性であれば現在の皮膚炎の原因と確認できます。パッチテスト時にスタンダードアレルゲン や金属アレルゲンを貼付し、陽性反応があれば現在の皮膚炎に関連して皮膚炎の増悪因子になっているかどうかを検討します。たとえば眼瞼の接触皮膚炎症例でアイシャドウのパッチテストは全て陰性でニッケルが陽性であることが判明すると、皮膚炎の原因は化粧品金属プレートの関与、ビューラーの関与などを考えるわけです。原因物質が判明し日常生活でアレルゲン除去が成功すれば皮膚炎が完治する症例もあるので、パッチテストは慢性遷延性湿疹病変(長期にわたり症状が改善しない湿疹)には試みる価値のある検査法といえます。検査結果は患者のアレルギー歴史を物語るものであり、原因アレルゲンと関連アレルゲンの交差感作成立症例 では将来起こりえる皮膚炎の予測をして患者の生活指導に役立ちます。面倒で手間のかかるパッチテストではありますが、時に新しいアレルゲンを見出し社会貢献に繋がることもあります。原因を推測しながら反応が予想通りに出ることもあるし、意外な物質が原因のこともあるのを私達も症例から学びます。皮膚科医としての存在価値を社会にアピールするためにも大切な手技、検査法であると自負しパッチテストを続けております。


 

i )本邦基準:皮膚科医 川村太郎らにより発表された判定基準
ii) ICDRG基準:International Contact Dermatitis Research Groupにより提案された判定基準
iii)スタンダ-トアレルゲンとは、日本皮膚アレルギ-・接触皮膚炎学会による日本人がかぶれやすいアレルゲンを集めたパッチテスト用試料。現在は、金属、香料、防腐剤などの25種類のアレルゲンから構成されている。
iv)ある化学物質に強いアレルギ-反応が成立した状態では、原因化学物質構造の一部または類似構造を有している物質にも反応してしまう状態を交差感作成立と言う

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