エッセイ

にきびとそのケア

林 伸和(虎の門病院 皮膚科部長) 2013年4月15日

にきびは、皮脂の分泌が多いことと毛穴が詰まることで、毛穴に皮脂が溜まってできます。この状態をコメドあるいは面皰(めんぽう)といいます。コメドの中でにきび菌が増えて炎症が起きると、赤いにきびや膿を持ったにきびになります。炎症が起きると、毛穴の周りの組織が破壊されて凹凸の瘢痕を残すことがあります。

にきびでは、日頃のスキンケアが大切です。朝晩2回、洗顔料を使って洗顔し、余分な皮脂やよごれを落として皮膚を清潔に保ちましょう。乾燥を懸念するあまり、洗顔料を使わずにすすぐだけでは、皮脂が溜まってにきびには良くありません。一方で1日5回も6回も洗顔すると、乾燥して肌荒れの原因にもなりかねません。適度で適切な洗顔を勧めます。メイクをしている場合には、クレンジングでメイクをしっかり落としてから、洗顔してください。

洗顔後の化粧水や保湿クリームなどの基礎化粧や日焼け止めは、にきびができにくいものを選びましょう。ノンコメドジェニックあるいはハイポコメドジェニックの表示のあるものは、毛穴が詰まりにくいことが確認できています。これらの記載のあるものが安心です。医療機関で行う塗り薬の治療では、皮膚が乾燥することがあります。保湿剤でのスキンケアをすることで、治療をスムーズに継続することができます。治療中に皮膚の乾燥を感じた場合には、担当医と相談して肌にあった保湿をしてください。

メイクアップをするとにきびになりやすいので、メイクアップをしないようにいわれたことはありませんか。これは、古い考え方です。最近では、化粧法を工夫することでにきびの治療を妨げずにメイクアップができることがわかっており、メイクアップでにきびを目立たなくして日常生活を快適に送る方がよいという考え方に変わってきています。その際のメイクのポイントは、二つあります。第一のポイントは、にきびをかくすためににきびの上にコンシーラーなどを重ね塗らないことです。にきびのある場所のメイクは補色を利用して、赤色を目立たなくする程度にとどめておきましょう。第二のポイントは、リップメイクやアイメイクを強調することです。にきびは目の周りや唇にはできません。にきびのできない場所を強調するメイクをすることで,目線を頬や顎から外して、にきびを相対的に目立たなくさせるのです。 にきびを触ったり、潰したりすると、毛穴が詰まりやすくなったり、炎症を強めたりして、にきびが悪化します。化粧を重ね塗ることは、触ることと同じで、かえってにきびを悪くします。また、マスクやマフラーでにきびを隠したり、毛先がにきびに当たるような髪型はお勧めできません。少なくとも自宅で過ごすときは、前髪を上げ、髪の毛を後ろで束ねる習慣をつけ、にきびに毛先が触れないようにしましょう。

現時点では、にきびが悪くなる特定の食べ物は医学的に証明されていません。もちろん、ピーナッツやチョコレートを食べてにきびができた経験のある方が、無理にこれらの食べ物を食べる必要性はありませんが、にきびがあるからといって、ピーナッツやチョコレートを一切食べてはいけない訳ではありません。同様に油ものや炭水化物、ケーキなどを一切食べないという方針はお勧めできません。特に思春期のにきびの方は、成長期でもあり、バランスの良い食事をとっていただきたいと思います。

これまでの治療は、にきび菌や炎症に対する抗生物質の塗り薬や飲み薬が主体でしたので、にきびが悪化してから医療機関を受診するのが一般的でした。しかし、2008年にアダパレンという塗り薬が登場して、早期の症状であるコメドが保険適用のある薬で治療できるようになりました。にきびは凹凸のある瘢痕になってしまうと、元に戻すことはできません。瘢痕を作らないように、できるだけ早い時期に医療機関を受診してください。