やさしい技術解説

中身を守る

容器

化粧品の容器は、デザイン性のみが重視されているように思われるかも知れませんが、化粧品を使い終わるまで、製品(中身)の品質を一定に保ち、使用する人が安心して最後まで使い切るという大切な目的を果たすために、重要な役割を担っています。

また、品質を守るだけでなく、使用するときの安全を守ることも重要な役割の一つです。コンパクトなどには指を挟んだりしない工夫がされていたり、鋭角部のある容器は肌を傷つける可能性があるので丸みをつけたりしています。その他にも、食品と間違われて誤食されたり、誤使用されないような形態が考えられています。製品を選ぶときだけでなく、使い終わるまで、商品名や使用方法が消えないように表示方法にも注意が払われています。

化粧品容器は、中に入れる化粧品によって、形状や機能、材質が選択されます

化粧品の容器には、化粧水や乳液など液体に使われる細口ボトル、クリームやペースト状の中身に使われる広口ボトルやチューブ、マスカラに使われる塗布具付き容器、粉おしろいなどの粉体の中身に使われるパウダー容器、ファンデーション用コンパクト容器、口紅用繰り出し容器、ペンシル容器、ポンプ容器、エアゾール容器などさまざまな種類があります。材質も、金属、ガラス、プラスチック、紙など多様で、中身の特性や使いやすさを考え合わせて、それらをうまく組み合わせて使っています。

主な化粧品容器の種類
  • 細口ボトル容器

  • チューブ容器

  • ポンプ容器

  • 広口ジャー容器

  • 塗布つき容器

  • エアゾール容器

  • コンパクト容器

  • 繰り出し容器

化粧品容器の性質
プラスチック 軽く、加工性がよい。透明、不透明、着色したものなどが多く使用される。
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)など。
ガラス 透明、不透明、着色したガラスびんが使われる。主にソーダ石灰ガラスを使用。香水びんなどにはクリスタルガラスが使われることがある。
金属 主にアルミニウムが使われる。さびやすい金属には、メッキやコーティングを行って使われる。

化粧品の容器には主に3つの機能があります

01.中身の保護

化粧品は、使い終わるまで中身の品質が保たれていなくてはなりません。
化粧品の成分の中には光(可視光線や紫外線)によって劣化しやすいものがあります。光から中身を守ることは容器の大切な役割の一つです。光で劣化する成分が光に当らないように不透明な容器が用いられる場合があります。

この場合、透明ではないため、中身の減り具合が分かりにくいこともありますが、中身を守るためには大切なことです。空気中の酸素や水分の透過が原因で中身が変質・変臭することもありますので、酸素などが透過しないようにアルミニウムの層を入れる場合もあります。また、チューブ容器などは、一度出した中身が容器に逆流しないようなしくみを用いて、容器内の化粧品が空気に触れないように作られているものもあります。

02.使いやすさ

利便性は、開けやすさ、持ちやすさなどの人間工学的機能です。
安全に使えることはもちろんですが、使いやすさにも工夫があります。それぞれの化粧品を使用するときや保管するときを考えて、容器の形、大きさ、重さ、硬さなどを決めています。

例えば、蓋は開けやすいように、なおかつ、勝手に開かないように調整されていますし、ボトルは、手に持ちやすく、落としにくい形に工夫されています。また、メイク用の化粧品は、携帯するときのことも考慮されています。
中身を使いやすくする工夫としては、内容物を簡単に、かつ適量出せるようになっているポンプ容器や、メイク用化粧品では、唇やまつげなど、特定のポイントを美しく仕上げる繰り出しタイプの口紅や、ブラシと一体化したマスカラ容器などがあります。

03.デザイン性

デザイン性の高い化粧品容器はファッション性に優れ、製品のもつ魅力を引き立たせます。店頭で陳列しているときだけでなく、ドレッサーや洗面台に並んでいるときや、化粧品を使用しているときも、幸せな気分にしてくれます。

この三つの基本機能以外に、廃棄する場合を考慮した材質選定や詰め替え容器の開発など、地球環境保護や経済性などの社会性も加味されて容器は開発されています。

1995年に施行された製品物責任法(PL法)では、容器に関しても、1.設計上の欠陥、2.製造上の欠陥、3.表示上の欠陥 があってはならないとされています。化粧品を製造するときは、試作品の使用テストをさまざまな状況で充分に行って、安心して使える製品を世に出しています。

化粧品容器に関するQ&A

    • Q1
      なぜ、透明な容器を使わない製品があるのですか?
    • A
      化粧品の中には、光の影響を長時間受けると劣化しやすい成分が配合されているものがあります。
      そのため、これらの製品の容器は、光をさえぎり、中身の安定性を保つ目的で、容器に着色したりして、遮光性が高められています。
    • Q2
      なぜ、別の容器に詰め替えて使ってはいけないのですか?
    • A

      化粧品容器は、中身の品質を保護し、一番よい状態で使用できるように、それぞれの製品に最適な設計がされているからです。(ただし、詰め替え用がある場合は、指定の容器に詰め替えられます。)

      「旅行に行くために、化粧品を別の容器に詰め替えたら、容器が溶けてベタベタになってしまいました。」

      化粧品に配合されている成分の中には、まれに容器の素材であるプラスチックなどを変質させてしまうものがあります。

      本来、化粧品の容器は、製品ごとに耐久性を確認して材質や形が選ばれていますので、中身によって容器が変質するというようなことはありません。しかし、中身を特定して作られていない別の容器では、化粧品の成分と容器の相性によって、このようなトラブルが起きることがあるのです。

      「泡で出てくる洗浄料」の詰め替え用を買って、自宅にあるポンプ容器に詰め替えましたが、泡状にならずに液体のまま出てきます。」

      泡で出てくる洗浄料は、容器の特別なしくみを使って、液体を泡状に変えています。そのため、専用の容器でないと、液体は泡状にはなりません。また、同じようなしくみの容器でも、中身の成分の配合等によってきれいな泡が出てこない場合があります。このようなトラブルを避けるためにも、指定の容器を使いましょう。

    • Q3
      「詰め替え用」がある製品の容器本体は、どのくらいで容器を交換したらよいのですか?
    • A
      容器本体は、使っていくうちに消耗していきます。
      シャンプーのポンプ容器、ファンデーションのコンパクトなど容器の種類、使い方や保管条件によって消耗度は異なりますので、具体的な回数や、年数で表すことはできませんが、最適な状態で製品を使い続けていただくためには、適宜、交換することをおすすめします。
      容器が劣化して使えなくなるだけでなく、中身が飛び出して、周りを汚してしまったり、状況によっては中身の品質低下につながることがあります。

化粧品を詰め替えるときに注意していただきたいこと(専用容器に詰め替える場合)

ひと口に詰め替え用と言っても、ファンデーションのレフィル、パウチに入ったシャンプーやコンディショナーなど、種類はさまざまです。

また、同じ種類の製品でも、製品ごとに詰め替え方法が異なります。化粧品を最適な状態で使用するためには、使用説明をよく読み、注意事項は必ず守るようにしましょう。