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エッセイ
温泉や入浴の健康への活用法
松元 秀次(鹿児島大学リハビリテーション医学 診療講師)
2012年10月15日
1.温泉や入浴の効果
温泉や入浴の効果は、①物理作用と②化学的作用、③温泉環境地作用 に由来します。①物理作用とは、温熱作用(からだが温まる作用)や浮力(水中で浮く作用)、水の抵抗、静水圧(水中での深さが増す毎に体表面に圧がかかる作用)、力媒体(打たせ湯やジャグジーなどの皮膚への作用)を指します。②化学的作用は、主に含有成分効果です。③温泉環境地作用は、気温や湿度、日差し、眺望といった周辺環境によるものです。
2.最適な入浴法とは?
一般的な入浴法である全身浴では、肩まで風呂につかります。この方法は、体が温まりやすく、その気持ち良さは心理的なストレス解消につながります。体の温度は41℃くらいのお湯でしたら10分で1℃くらいすぐに上昇しますので、長湯をすると、のぼせやすく注意が必要です。また、胸が水圧によって多少圧迫され 心肺に負担をかけますので、心配な方は半身浴がお勧めです。
みぞおちより下の部分がお湯に浸かる入浴法が半身浴です。胸が水圧から開放されて心肺にかかる負担が少なくなります。お年寄りや高血圧、心臓の弱い方、慢性の肺の病気に、特にお勧めの入浴法です。全身浴で入浴するよりは体温の上がりは遅いのですが、長時間入浴すれば、下半身で温められた血液が循環して全身をゆっくりと内側から暖めていきますので、長めに入浴することをおすすめします(20〜30分が一般的です)。気を付けていただきたいのは 浴室内の温度です。特に冬は、浴室暖房したり、シャワーでお湯を撒いたり、お湯の蒸気を立ち込めるなど して、室温を高めに設定してください。
手先や足先の“冷え”を改善したい方には、部分浴がお勧めです。手浴は手だけを温める方法ですが、手から温まった血液は肩や首の近くを通っていきますので、肩や首が温まり、肩こりや首のこりにも効果的です。足浴、いわゆる足湯は、最近では多くの温泉地や観光地等で見られるようになりました。気軽に話す場であったり、旅の疲れを癒やしてくれる場であったりします。ふくらはぎより下を少し湯温の高い湯につけて温めます。靴下を脱ぎ、ズボンの裾をあげるだけで、衣服をつけたままでも簡単に入浴できるのが長所です。足の血流を良くして、足にたまった老廃物を洗い流し、むくみもとってくれます。足浴で温まった血液が体を循環することによって、全身温まりますが、全身浴に比べると時間はかかります。
手浴や足浴は、41〜42℃で10〜15分が一般的で、41度の足浴を15分行うと体温は0.5度上昇します。
3.運動浴はどんなヒトに向いているの?
運動浴(プールでの水中訓練)は、リハビリテーション治療として最も有効で安価な手段で、変形性関節症や脊椎症、リウマチ、腰痛、筋肉痛といったほとんどの骨関節・筋疾患や、脳卒中などの多くの神経疾患に適応します。浮力のある水中では歩きやすくなり、関節への負担が減ることで痛みも軽減します。また、温熱作用で血流増加や代謝亢進が起こり、水の抵抗で倒れにくく抵抗運動が可能となります。ただし、転倒しやすい方は、別の方と一緒に運動浴を楽しんでください。
4.入浴剤の選び方
温泉地を訪ねての温泉入浴が時間的にも地理的にも困難なときは人工温泉浴剤が便利です。
保温効果には、無機塩類(硫化ナトリウム、塩化ナトリウム)や炭酸入浴剤が優れており、変形性関節症や腰痛などの痛みに効果があります。アルカリ塩類(炭酸水素ナトリウム)は、皮脂に溶け込んだ汚れを除去し、皮膚の清浄効果をもち、皮膚保湿効果や皮膚柔軟化効果も併せもっています。
最も研究されている人工温泉浴剤は、炭酸入浴剤で、痛みの軽減や血行促進作用、皮膚温上昇作用、抗炎症作用、降圧作用など多くの効果をもつことが分かってきています。炭酸ガスは、体表から皮下組織へ直接浸透し毛細血管を拡張させることで皮下血流を増加するというメカニズムで、この直接の皮下浸透は他の成分ではみられません。最近では、炭酸入浴剤が、生活習慣病に有効であるという研究結果が出てきており注目されているところです。
皮膚の症状にお悩みの方は、症状に応じた入浴剤の選択が勧められます。上記の入浴剤の効果を参考に、承認された用法・用量をまもって使用してください。
5.入浴 vs シャワー浴
最近の調査では、特に若者が湯船に浸からずシャワー浴で済ます割合が多いことが明らかになっています(若者のお風呂ばなれ)。湯船に浸かる入浴は、体が温まりやすく、コリや痛みを取り、ストレス解消につながります。これは、シャワー浴では得られない効果です。1日の疲れをお風呂で解消したいのであれば、ゆっくり湯船に浸かる習慣をお勧めします。同時に保温・保湿効果があり、血行促進効果のある入浴剤を使うことで、なお一層の美肌や健康を保てると思います。