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やさしい技術解説

粒子を細かく、均一に

分散

粒子を水や油などにきれいに混ぜることを分散といいます。たとえば、抹茶にお湯を注いでもそれだけでは上手く混ざりませんが、茶筅を使うときれいに混ざります。上手な人のたてる抹茶はおいしいですね。これも分散の一例です。

さて、メークアップ化粧品には色を付けるために顔料が配合されていますが、この顔料は水や油には溶けない小さな粒子です。抹茶と同じで綺麗に混ぜる必要があります。顔料粒子が細かく均一に分散されると色も鮮やかになります。もし、顔料粒子の混ざり方が悪いとどうなるでしょうか? メークアップ化粧品では色むらなどが起こります。また、塗布するときにブツブツの塊があったり、ザラザラした使い心地になったりして、使用性が悪くなります。紫外線防止用化粧品では紫外線防御粉体の分散が悪いと、塗布したところがむらになって日焼けするかも知れません。このように顔料等を上手く分散させてその状態を保つ技術はとても大切です。

図1に示すように分散には大きく①濡れ、②機械的解砕、③安定化という三つの過程があります。

図1.分散の三過程(濡れ、解砕、安定化)

  • ① 濡れ

    濡れの過程では、乾燥した粒子凝集体が液体に濡れて粒子間の凝集力が低下します。それではどうすれば粒子が液体に濡れるのでしょうか?濡れるには粒子の表面張力が液体の表面張力よりも大きければ良いのです。無機顔料は水より表面張力が大きいので水の濡れは良好ですが、有機顔料は水より表面張力が小さいので濡れにくい性質を持っています。濡れにくい場合は界面活性剤などを利用して濡れやすくします。濡れによって粒子間の付着力が低下すると機械力による解砕が容易になります。

  • ② 機械的解砕

    粒子が液体に濡れた後、分散機の機械力などが加わってより小さな粒子凝集体になりますが、この過程を機械的解砕といいます。解砕に関与する機械力としてはせん断、衝突、キャビテーションがあります。これらの力によって粒子をばらばらにします。非常に小さい粒子を解砕させるには油などとともに小さなビーズを入れて撹拌するビーズミルなどが使われています。

  • ③ 安定化

    小さくなった粒子凝集体は熱運動などで簡単に再凝集します。せっかく分散しても、油性ファンデーションやネイルエナメルなどは時間とともに顔料が沈降したり、顔料粒子が集まって凝集したりして色むらなどが起こる場合があります。

    粒子の沈降を防ぐには液体の粘度を高くすると良いのですが、重たい使用感になってしまいます。そのため、静置している時は粘度が高く、塗布する時には粘度が低くなる構造粘性のある系を用いる場合があります。

    また、凝集を防いで分散安定性を保つためには大きく二つの方法があります。

    ひとつは粒子の電荷による方法です。粒子は等電点という電荷ゼロになる点がありますが、それより酸性側では電荷がプラス、アルカリ側ではマイナスになります。図2のように電荷がプラス同士、マイナス同士であれば反発して粒子は合一しませんが、等電点付近では電荷の反発がないので凝集が起こり易くなります。

    図2.粒子の等電点と分散

    もうひとつは粒子の表面に樹脂や分散剤などの高分子を吸着させ、吸着層間の斥力を利用する方法です。

この①、②、③の三つの過程がすべて満足された場合に次々と凝集が小さくなって理想的には一次粒子まで分散されそれが安定することになります。

顔料を分散させる塗料やインキでも分散技術は大変重要で「永遠のテーマ」と言われています。それ以外でもナノ粒子をポリマーに分散させたナノコンポジット、燃料電池、カーボンナノチューブを分散させた導電性材料など様々な分野で分散技術が求められています。

このように何気なく使っているメークアップ化粧品や紫外線防止用化粧品ですが、非常に高度な技術が使われて製造されています。