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エッセイ

「わたし」が輝く色

大澤 かほる(一般社団法人日本流行色協会
クリエイティブディレクター/ジェネラルマネージャー) 2012年5月1日

しのぶれど色にでにけり

「しのぶれど色にでにけりわが恋は」拾遺集の恋第一巻に出てくる歌です。最近は百人一首が静かなブームですからご存じの方もいらっしゃるでしょう。この句は「ものや思ふと人の問うまで」と続きます。この歌には隠そうとしても隠しきれない恋心が詠われています。
「ひょっとして恋でもしているでしょう?」なんて聞かれてしまうほど「恋心」が「色」つまり表情に出てしまったという歌です。

恋をすると女性は美しくなるといいます。恋にときめく気持ちが女性のホルモンバランスを変え細胞を活性化させるだけではなく、意識しようとしまいと恋の相手にとって魅力的でありたいという気持ちが、恋する人を輝かせる一番の理由だと思います。
「恋」は「わたし」を輝かせるための特効薬とも言えるのです。

未来を創る色

恋が特効薬なんて言われても…と言う人は多いと思います。何を隠そう私もその一人ですから。では、恋をしていなくても「わたし」が輝くためにはどうような色づかいをすればよいでしょうか。今回は誰にでもできる色づかいの秘訣を1つお伝えしたいと思いますが、その前に少し私の仕事についてお話をさせて下さい。

私は(一社)日本流行色協会というところで「未来を創る色」を発信しています。世界の人々がそれぞれの幸せを手に入れるためには、どのような色づかいをしたらいいかということを提案しているのです。デザイナーや商品を企画する人など、まだ見ぬ新しい何かを創り出す人々は、未来がどうあれば良いかを考えて企画を立てます。その時、私たちが発信する色彩情報が活用されているのです。

地球の色、街の色、「わたし」を輝かせる色

世界にはたくさんの人がいます。国によって住む環境が大きく違います。同じ国でも個人個人生きる環境が違います。しかし、昨年の東日本大震災以来、地球がひとつであると実感している人が増えたのではないでしょうか。インターネットで震災の映像が瞬時に世界を巡り、遠い国々から応援の声が寄せられました。

1年が過ぎた今、日本から遠く離れた国で、津波で流された船が発見されたというニュースが報道されています。メルトダウンした原子力発電所から大気に流れ出た物質も風で遠くの国々まで運ばれていきます。

世界の国々は海の水や空を巡る大気でつながっています。地球環境が汚染されると地球に住む動植物の生命が危うくなります。私たちは地球上に住む他の動植物、大地や海中の微生物まで含んだ大きな生態系の中で生かされているのです。

地球をめぐる大気や水、その中で生きる全ての生き物、人類、それぞれが、互いに影響しながら世界は動いています。つまり周囲の人々との関係や環境によって「わたし」の輝き方が変わってきます。逆に言えば、自分が世界とどのようにかかわるかによって「わたし」の色が変わるということです。

「わたし」を白黒写真で撮ると

前置きが長くなりましたが今回は「わたし」を輝かせるための1つの秘訣をお伝えしましょう。世界が関連しながら動いているように、色も周囲の色によって見え方が変わります。例えば黒を背景にした色と白を背景にした色とでは、同じ色でも明るさが変わって見えます。黒を背景にした色の方が、白を背景にした色よりも明るく感じられます。

あまり比べる機会はありませんが、同じ背景同じ光の条件のもとで撮影された白黒写真では、黒い服を着た「わたし」の肌の方が、白い服を着たときより明るく(白っぽく)感じられるということです。このような現象は肌と接する部分でより際立って感じられます。

白黒写真で撮影した写真は赤や青などといった色ではなく、白から黒の陰影で表現されています。その陰影によって立体感や距離感を把握することができます。物と物とが接する部分や背景との明暗の差が大きいと、物の輪郭がはっきりしますが、明暗差が小さいと物の境目が曖昧に感じられます。私たちの目は赤や青といった色の差よりも明暗差に敏感なのです。

    中央におかれた四角形は同じグレイですが、黒い背景に置かれた四角形のほうが明るく見えます。

    左右どちらとも背景のピンクも、中央におかれたオレンジ色も同じです。左側の中央に置かれた色は見分けがつきにくいですね。右側は背景色と中央の四角形との間に白を挟みました。右側の方が両方の色がはっきりと見えますね。

肌と洋服との明暗差が小さいと洋服と肌との境目が曖昧になり、遠めで見たとき極端な場合では洋服を着ていないように見えます。「ヌーディー」なイメージを強調するなど特別に意図を持っている場合は別ですが、できれば肌と同じ明るさの色は避けた方がいいでしょう。でもどうしてもその色を着たい場合は肌と接する部分、例えば首周りや袖口などに、白、灰色、黒といった無彩色(赤や青といった色みを持たない色)を挟むと肌色も洋服の色も印象がはっきりします。

私たちは自分の肌の明るさがどのくらいかあまり意識しませんが、今度洋服を選ぶときは是非この「明暗差」という言葉を思い出してください。洋服を選ぶときは肌に当てて目を細めて肌色と洋服の色との境目がはっきりすれば明暗差が大きい、境目がぼやける場合は明暗差が少ない、ということが分かります。

一般社団法人 日本流行色協会ホームページ

http://www.jafca.org